HOME >> アスベストの基礎知識
アスベストは、天然に産する繊維状結晶鉱物(クリソタイル、アモサイト、クロシドライト)の
総称で、耐熱性、耐酸性、耐摩耗性が優れることから、住宅の吹付け材、壁天井、水道管等の建材、発電所、科学プラント等の配管シール材、自動車ブレーキの磨耗材などの工業製品として戦前から輸入、使用されてきました。
※火成岩が自然現象の力により線状に変化したもの。太古より、火山活動で火成岩の一種である超塩基性岩の地殻内マグマの裂け目に、水が進入し、非常に高い圧力のもとで熱水作用を受け、その裂け目に繊維状結晶が生成 | ||
クロシドライト |
クリソタイル |
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アンソフィライト |
アモサイト |
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アクチノライト |
トレモライト |
「アスベストは発ガン性物質である」と言われてますが、アスベストを吸い込んでも発病に至るまでおおよそ20年から30年の潜伏期間がある為、あまり身近な問題として認識されなかったと言えます。
しかし、近年、欧米諸を始めとしアスベストによる疾病患者が多く見られるようになり、その対策がわが国においても真剣に行われてきました。
アスベストの吸引によって生じることがわかってきた疾病は主として
◎石綿肺(じん肺) ◎肺ガン ◎悪性中皮腫
等があります。
現在、飛散しやすい状態で使用されているアスベストについては、すぐ一般環境から適切に隔離処理してゆく必要があります。
アスベストは、昭和25年頃からカナダ、ブラジルなどより輸入がスタートし、昭和50年頃から平成2年頃にかけて年間35万トン程度の輸入ピークを迎え、これまでのところ推計蓄積量970万トンが輸入されてきました(図2)。平成16年に、国内ではアスベストの製造が禁止になったことから、今後は、建築物の解体に伴うアスベストの廃棄・排出が本格的に始まろうとしています。
アスベストは空気中に飛散した粉塵等を吸入することにより、肺などに健康被害が発生する恐れがあります(図3)。これらの疾病については、アスベスト粉塵の吸入から発症するまでの期間が30年以上あると考えられています。過去の被害状況について、平成16年度以前において労災認定されたアスベスト暴露による肺ガン、中皮腫の死亡者は603名との報告があります。(厚生労働省公表)
ILO(国際労働機関)、WHO(世界保健機関)が昭和47年にアスベストの癌原性を公表してから、昭和50年に国内では吹付け作業の禁止、平成16年から、建材、接着剤、ブレーキパッドなどの製造、使用が禁止されました。現在では、一部シール材、絶縁材料は使用されていますが、平成20年を目処に使用、製造が全面禁止になることになっています(表1)。
アスベストに係る海外及び日本の規制動向 | ||
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海外 | 日本 | |
1970年代 | 1972:ILOの専門家会合でアスベストによる職業がんの発生指摘 | 1971:特定化学物質等障害予防規則(アスベスト等の化学物質の取扱を規制) |
1974:ACGIH(米国産業衛生専門家会議)がアスベストによる職業がんの発生指摘 | 1975:労働省安全衛生法(特化則) (建設現場での吹付け作業を原則禁止) |
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1980年代 | 1986:ILO条約で青石綿の使用禁止 | |
1989:WHOが青石綿と茶石綿の使用禁止 | 1989:大気汚染防止法改正(特定粉じんに位置づけ、敷地内境界濃度を規定) | |
1990年代 | 1993:EUが青石綿と茶石綿の販売・使用を禁止 | |
1993〜99:ドイツ、フランス、英国が一部を除きアスベストの使用を禁止 | 1995:労働安全衛生法改正(青石綿と茶石綿の製造・使用を禁止) | |
2000年代 | 2002:フランス全面禁止 | 2004:労働安全衛生法改正(アスベストの使用等を原則禁止) (08年までに使用全面禁止) |
2005:EUがアスベストの使用を全面禁止予定 | 2005:アスベスト障害予防規制制定(建築物の解体時の対策を規定) |